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2009年2月21日 (土)

 ガルシア・マルケス

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コロンビア出身のノーベル賞受賞作家による古典的名著「百年の孤独」。この国の皇太子殿下が愛飲されている焼酎としてその名は一躍有名になった。朝起きたら一晩で有名になっていた焼酎のほうが一般には良く知られている。

ここで取り上げるのは小説のほうだ。原著は1967年に出版されており、1972年に新潮社から鼓直の訳で単行本が出版されている。

この本は長い間文庫本では出版されなかった。翻訳で出ている単行本は当時でも高かった。愛読書の一冊なのだが、日本語訳で読んだことがないのに最近気が付いた。格好を付けて「Cien anos de soledad]の表題そのまま、原書で読んだと言いたいところだが、スペイン語では読めない。

そんなことを思い出したのは休日の朝、本棚を漁っていたらペンギン・モダン・クラシックスで出しているペーパーバック版「One Hundred Years of Solitude]を見付けたからだ。その本をパラパラとめくっていたらページの間から伝票が落ちてきた。それで、当時パリ、オペラ座通りに有った本屋さん、BRENTANO'Sで1978年に買っていることが分かった。

この本屋さんは英米書を専門に扱っていたので、その後も出張したり、会社員人生後半で何度目かの駐在をした時もよく通ったものだ。残念なことに4,5年前には、そこも無くなってしまったようだ。どこも読書人口は減っていりのだろうか。

僕は良くパリへ行くか、住むかしていたのだが、日本語で本が読めなければ、大抵英語で読んでいた。それは若い頃からの習慣というものだろう。その意味ではBRENTANO'Sには随分お世話になった。時間の経過と共に色々なものが消えて行く。

ガルシア・マルケスの「百年の孤独」についての思いを続けて書き留めたい。この小説の舞台となっている架空の町、Macondoが故国コロンビアから移し替えられたのかどうかは分からない。マルケス自身はコロンビアの出身だが、ボゴタ大学を出てジャーナリストになり、パリかバルセロナ、欧州のどこかで自国の新聞特派員をしていた時に故国の政変に遭遇した。
その結果、母国により政治的お尋ね者にされてしまった作家は、長い間故国の土を踏むことはなかった。異国で亡命生活を余儀なくされた作家にとって、小説の舞台設定は南米の小国でさえあれば、どこでも良かったのではないだろうか。

この小説の中にBanana Companyという北米の会社の話が出てくる。その会社と農園労働者は劣悪な衛生状態も原因の一つとなり会社と対立を深める。長いストライキの後、会社の代表が事態を収拾するため、町に交渉にやって来るという噂が流れる。

町では労働者たちだけでなく、その家族の女、子供たちが町の広場を埋め尽くし、交渉の開始を待つ。午後3時。国軍が広場を包囲する。午後3時過ぎ。北米資本のバナナ・カンパニーに支配された軍隊の4丁の機関銃が一斉に火を噴き、広場にいた人々はひとりを除き殆ど全員が殺されてしまう。

その夜遅く、先頭・最後尾そしと中程にも蒸気機関車を配置された二百輌の貨車が町はずれの駅に到着する。夜霧の中で犠牲者の遺体は積み込まれ、夜陰に乗じて運び出される。遺体は暗闇の海に捨てられ全ての証拠が消し去られる。という顛末に一章が割かれている。

僕はこの一章を読み、もちろん、強い衝撃を受けた。だが、これは小説だから架空の物語だろうと思っていた。それでなくともこの小説は奇想天外な、数々の物語で満ち溢れている。そして、それが魅力のひとつでもある。

しかし、それまで名前すら知らなかったUnited Fruitsという北米の国策会社が存在し、CIAと表裏一体となり、小説の舞台とは違うが、グアテマの文民政府を1954年に倒し、沢山の市民が殺されているという事実を知った。

それは「100年の孤独」を読み終えた後だったが、Banana CompanyはUnited Fruitsの移し替えなのだろうとようやく理解出来た。ここで、誤解を恐れずに言わせて貰えれば、「100年の孤独」は繰り返すが破天荒なエピソードで満ち溢れており、文句なく面白い。たまにはコミックから離れて本を読むのも良いのだ。

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