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2009年2月19日 (木)

 回想のマルコム X

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1964年に出版された「The Autobiography of Malcolm X」は貧しく無知な黒人青年が刑務所の中で初めて本格的に学び、母語による表現を獲得して行く物語としても読める。マルコム・リトルは極めて優秀な学生だったが、15歳の折、弁護士になりたいと言う将来の夢を、善意あふれるの白人教師の次の一言でつぶされる。「黒人は現実的な夢を持たなくてはならない。君は手先が器用だから大工なんかどうだ。」マルコムは食堂車の給仕になり、チンピラになり、白人の愛人達と強盗を犯すまでになる。

現在、日本語では「完訳 マルコムX 自伝」上下巻が浜本武雄と言う人の翻訳で中公文庫で出ているようだ。単行本が1993年に出ていたが、現在は絶版となり、アマゾンなどで古本としてネットで買うことは出来る。

前年に映画「マルコムX」(1992年アメリカ)は監督「DO THE RIGHT THING」のスパイク・リー、主演デンゼル・ワシントンで封切られているので話題性を狙い出版されたものだろう。

僕が日本のマスコミや広告を手掛ける人々、所謂、業界人の浅薄さ、底の浅さに唖然とされられるのは「マルコムX」の激烈な生い立ちや生き様で獲得した現在でもそのまま通用する彼の普遍性を取り上げることなど金輪際なく、全てファッションとして消化してしまうことだ。

彼らの未熟さは、我々の思想的未熟さの表れなのだろう。また、残念ながら映画そのものも出来は良くない。終始、平板に原作をなぞることで映画は進み、原作の持つ感動は得られない。是非、著作そのものを読んで欲しい。短いが鮮烈な彼の生涯が一気に追体験出来、時間を忘れると思う。

マルコムXは「深南部で自分たちの教会が焼かれ、黒人の少女たちが殺されているのに何故、自分たち黒人が朝鮮半島で、ドイツで、南太平洋で、それぞれの戦争で中国兵、ドイツ兵、日本兵と戦わなければならないのか。どうして白人の為に血を流さなければならないのか、血を流すのなら自分たちの戦いの為に流そう。」とそんなことは考えたこともなかった黒人同胞の前でスピーチをする。彼が極めて優れたアジテーターだったことが良く分かる演説だと思う。

今日、アフガニスタンで、イラクで兵士にならざるを得ない境遇の貧しい黒人や白人たちが本当は何と戦わなければならないのか、「マルコムX 自伝」はそれをはっきり教えてくれる。黒人であるオバマ大統領の出現が貧しい階層の人々の境遇を変えることになるのだろうか。アメリカの民主主義が持つ懐の深さに期待しているものの一人だ。国民皆保険が実現出来れば、ウイルス感染の爆発は防げる。

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