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2009年6月29日 (月)

第2章 第6話 日本から来たお嬢さん

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小説 若気の至りは熟年まで祟る

さて、3人しか居ない事務所の中で、ひとり育ちの良さそう30歳位のお嬢さんが働いていた。どうも、日本の有力者から預かっているお嬢さんのようで、あれほど女好きの周作モドキがそのお嬢さんには全く頭が上がらなかった。彼女はじきに日本に帰ることにしていたようで、帰国前の1年ほどのビザ残存期間、腰掛け的に、現地業者との交渉事を一手に引き受けていた。俺は女史の経歴を知りもしなかったが、大学の中途から現地で教育を受けたような印象を受けた。60年代後半に欧州留学出来る層はまだ、極めて限られていた。60年代初頭、国内で短大を含めて大学と名のつくところへ進学出来た高校卒業者は1割位のものだったそうだから、当時留学出来た彼女は極めて恵まれた階層から出て来ていたのだろうとは簡単に想像出来た。

そのお嬢さんは周作モドキのことを・・・氏と呼んでいた。ずいぶん年上に見えた彼を格下扱いし、全く尊敬もしていなかった。あなたとは育ちが違うと彼女の顔にははっきり書いて有った。彼女にはある種の育ちの良さから来る無意識な残酷さがその口調からも垣間見えた。その狭い日本人社会とそこで生きる同朋への徹底した無関心が、なおさら、そのような印象を俺に深めさせた。華奢で色白、高い鼻梁が彼女をことさらに理知的に見せていた。週末、彼女は自らの階層に属するであろうフランス人達とヨット遊びをしたりして楽しんでいたようだ。会話の端々で、そのような光景が想像は出来たが、俺には実際のところ夢のような話だった。田舎で育った俺のところに海はなく、平野はどこまでも稲穂が地平線を形作っていた。春にはひばりが鳴き、秋には鬼やんまや赤とんぼの舞う、のどかな田園風景がどこまで続く。

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