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2009年6月 8日 (月)

第1章 第九話 一瞬の幸せ

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それも慣れてしまえばどうと言うことはない仕事だった。謂わば単純作業の繰り返しだ。ただ、一日にやたら沢山の人に会い、慣れない言葉を話すのには疲れた。又、早朝に空港へ行き、深夜に駅で出迎えを行うこともまれではなかった。拘束時間がやたらと長く、3ヵ月後には血尿が出た。それでも、若かった俺は時間が出来れば、この街の景色や雰囲気を楽しんだ。6月のマロニエやニセアカシアの街路樹は旺盛に枝葉を車の行き交う石畳に樹影を投げかけた。手入れの行き届いた緑のトンネルが街路の果てるまで続いていた。早朝のタクシーの窓から眺める若緑の天蓋は息を呑むような美しさだった。束の間の休日、廃兵院近くの市内に有った空港ターミナルから左岸の河沿いの歩道を遡れば、乾き切った白茶けた土がほこりとなって靴を白くしてゆく。アレキサンダー三世橋の黄金色に輝く橋桁の豪奢さは、そんなささいな不快さを忘れさせてくれた。遠くにはサンルイ島の中洲が緑に覆われて見えた。それはあたかも、そこに見える遠くの小島に何かよいことがありそうな気分にさせた。 疲れた肉体と精神を癒してくれる束の間の幸せをその風景が与えてくれた。

小説 若気の至れは熟年までつづく。

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